プロフィール

宮野葵依

Author:宮野葵依
HN: 宮野葵依
性別: 女性
趣味:
音楽(=邦ロック、classic)
本、ゲーム

*自己紹介
   
基本的性格:

 寂しがり屋のうさぎ
 不思議天然系少女
 日本史好きな歴史バカ

邦ロック=音楽
読書、ゲーム
をこよなく愛しており
この3つがないと
生きていけない

お菓子作りが好きで
雑貨屋巡り、カフェ巡り
お茶会好き。

好きな場所:

横浜、吉祥寺、自由が丘
代官山、京都

 ★お気に入りなものは
   リラックマ
   リサとガスパール
   COBE COBE

音楽は邦ロック中心で
関東ライブには
よく顔を出しています。

洋楽は
ほとんど全く聴きません。

   
★ 好きなアーティスト
(=邦ロック中心)

フジファブリック、メレンゲ
ASIAN KUNG-FU GENERATION
ELLEGARDEN
BUMP OF CHICKEN
GOING UNDER GROUND
音速ライン、くるり
STRAIGHTENER、Plane
DOPING PANDA
THE BACK HORN
APOGEE、 Does
キャプテンストライダム
レミオロメン、aiko
BEAT CRUSADERS
Base Ball Baer
TRICERATOPS
Syrup16
9mm prabellum bulet
monobright
Brathman、leitmotif
坂本真綾、髭


★ 好きな作家

東野圭吾、市川拓司
島本理生、宮部みゆき
伊坂幸太郎、桜庭一樹
有川浩、豊島ミホ
山崎ナオコーラ
小手鞠るい、中村航
生田紗代、西尾維新
唯川恵、橋本紡
沢村凛、乙一
魚住直子、重松清
宮木あやこetc・・・


*日本の絵本作家では

あだちなみ、せなけいこ
新井良二、酒井駒子
山田詩子、石井桃子
コンドウアキ、どいかや
松岡享子、中川李枝子
山脇百合子、村岡康成
とりごえまり、小川未明
宮沢賢治、柿本幸造


★外国絵本作家さんだと

エリック.カール
ジョン.バーニンガム
ミシャル=エンデ
ジミー=リャオ
ルイス.キャロル
アンドレー.ダーハン
トミー.アンゲラー
ジーン.ジオン
マーガレット.ブロイ.
グレアム
ケビン=ヘンクス
レオ=レオニー
etc・・・

★好きなゲーム

金色のコルダ、
金色のコルダ2
金色のコルダ2アンコール
金色のコルダ2 f
金色のコルダ2 fアンコール


遥かなる時空の中で
シリーズ
(2,3,4/舞一夜
/十六夜日記)

QuinRose系
(アラビアンズ.ロスト、
クリムゾン.エンパイア
ハートの国のアリス+
クローバーの国のアリス)

ときめきメモリアル
Girs side 1、2

オレンジハニー
星色のおくりもの

翡翠の欠片シリーズ
/玉依姫奇譚
(翡翠の欠片、翡翠の雫
緋色の欠片2、3)

戦国無双

シャドウハーツ1,2

ペルソナ3、4


★好きな尊敬する漫画家

緑川ゆき先生が一番好き

モリエサトシ、藤間麗
高屋奈月
高尾滋、 谷川史子
羽海野チカ
呉由姫、望月花梨
椎名軽穂
小畑健、天野明etc・・・

*ちなみに、このサイト
ペタアリサイト化
していますが・・・

ハート、クローバを通して
管理人が

ペーター至上主義
カーティス至上主義な為

裏は、SSほとんど
この2人・・・。。
ペタアリの方が
めちゃ多いですね。

白兎、カーティス贔屓(笑)

*ここからは
注意書きです。

必読お願いします!

このサイトで、SSで
純粋なものを
希望されてる方には
オススメできません。

中には純粋なものも
ありますが・・・

*R指定物が多々
ほとんどですので
この類のものが
苦手な方は
即刻、お帰り下さい。

あくまで、ここは
管理人のSS
ブログサイトであり
管理人のイメージ+
原作の流れを
組み合わせて
構成されています。

同じキャラが好きで
であっても
イメージが壊れる
可能性がありますので
自分の中に
キャライメージがある方も
オススメできません

このサイトは
今まで上げて来たSS
構成されてきた通りの
SSをこれから先も
変わらずに
上げていきます

構成、形式に関しても
方向性を転換
考え方の転向は
私自身、ありません

*こちらに
書いてあるSSに関して

普段感じている事
書きたいものを
原作の流れに
絡み合わせながら
自分の流れにそって
文章にしています

SSで、必然的に
性的描写、また
殺伐とした描写が
含まれているSSも
あります
その点を理解した上で
SSを見て頂くよう
お願いします。

+警告文を出している
SSを見て頂く事
に関しては
このサイトブログを
見て頂く方の良識に
お任せします。

+また、書き手の
配慮も忘れないよう
その手の類のものは
警告文付きで発表します

*また、こちらの
左側には・・・
更新記録、次回予定
SSのコンセプト
自分の語りたい事
好きなものが中心の
内容ですので
共感して頂ける方は
是非、退屈しのぎに
よろしければどうぞ。

+登録させて
頂いているリンク
サーチエンジン
同盟の方に関しては
きちんと自分のサイト
の紹介文、傾向を
明示をしてあります。

それを踏まえた上で
それでも平気だよ〜と
言う方のみ
こちらのサイトのSSを
ご覧になって下さい

なお、良識に関する
コメントの私の意見に
関しては、こちらに
載せましたので
以後、こう言った
コメントを頂いても
お返事はしませんので
あしからず。

基本的に
コメントは本当に
申し訳ないのですが
受け付けない形を
取らせて頂いています

また、こちらにあるSS

*QuinRoseより

「アラビアンズ.ロスト」
「ハートの国のアリス」
「クローバーの国のアリス」
「クリムゾン.エンパイア」

*KOEIより
「遥かなる時空の中で4」

*IDEA FACTORYより
「緋色の欠片」
「翡翠の雫」1、2、3

の版権は、全て
QuinRose、KOEI
IDEA FACTORY
既存されており
著作権は
全てこちらにあります。
ここはあくまで、非公式
ブログサイトです。

★今回の更新

真翡翠の欠片2より
先に、克彦さんと珠洲のSS、裏1本
なりましたv

克彦さんの過去をどうしても
書きたかったんですが
まだまだ、掘り下げて書きたいですー。

ペタアリ、連載ものはしばし休止中。
当分先の更新予定です。
「花とアリス」楽しみにして
下さる方、すいません
もう、しばらくお待ち下さい☆


次回の更新は・・・

本当にっ!!
エース絡みのSS裏1本

ペタアリ表裏2本SS
になりそうです。
エースとの甘めなのも入れて
書き途中です。


その他
緋色、翡翠シリーズより
祐一×珠紀SS1本

祐一、片思いもので裏
になります

真弘の事が好きな
珠紀を好きな祐一
が登場・・・(やっかい/笑)

ちょこっと
真弘も出る予定です。

忍千甘め思案中

遥か4も描きますー。
那×千、アシュ千
忍千1本の予定
(=アシュ千は確定中)

*QuinRose談義

ハートの国のアリス/PS2版

白ウサギさん
100%CG回収済み
回想は100%
白ウサギコンプ完了★

真相エンド1、2攻略
コンプ済み

*ペーター
追加イベント攻略メモ

自力で出したい方は
スルーしてください!!

<非滞在地イベントです>

ペーターの横槍まで見る
(=ここで、受け入れないと
発生しませんので注意)
       ↓
残りのターン、発生するまで
全てペーターに逢いに行く

時間が合わない場合は
砂時計を拾いに行ったりして
昼間にして逢いに行く

白ウサギ、愛です〜。
どうしても見たくて
頑張りました。
ちなみにこのイベントを
見た時、白ウサギは
すげなく女性の誘いを断る
/アリス以外
はたまた、撃ちかねない
孤高の王子様・・・
ペーターは
まごうことなく王子属性
・・・だと思いました(笑)

アリスの名前を
フルネームで呼んだ時には
もう・・・・・!!
ジョーカーが楽しみすぎる。

同時で攻略していた
エリオットにはごめんと
思いつつ・・・
(=エリオットも、もちろん
攻略しました)

+ナイトメアの追加イベント

かなりあって
すごく嬉しかったです!!
イラストが可愛いし
落ちていくさまも
星を出すさまも☆
何より、ナイトメアー。
好きなキャラなので!!

本当なら、白ウサギと
ナイトメアの図書カード
欲しいくらい。
初回版限定なので
間に合わず・・・(涙)

星はロマンチックなのに
吐血キャラ・・・
色んなものが出なくて
良かった・・・
杉田さん、好きです(笑)

★ジョーカーの国のアリス

10月31日発売決定★

ペーターの新しいイラストが・・・
アリスと花と白ウサギ・・・v
(=公式ビジュアル参照
予約を早くしたい・・・・。

>>真翡翠の欠片2買いました☆

相変わらず、昌と珠洲は
相も変わらず甘かったです(笑)
克彦さんと珠洲の関係が
気になり・・・
すごく好きになりましたvv
カズキヨネさんのイラスト、万歳!!



只今、ペルソナ(PSP版)攻略中

>>緋色の欠片TALK

全てのキャラ愛ですが
特に、祐一先輩が好き。
あぁ、でも、真弘先輩も・・・

翡翠の雫は
昌が大好きな
壬生先輩、寄りっ子です。

賀茂君も捨てがたいが
昌が大好き!!!
あの珠洲への嫉妬深さが
しかもツンデレ属性。。

真翡翠の欠片2、発売おめでとうvv

『薄桜鬼』が気になる最近。

>>ハートの国のアリス

管理人の趣向
ペタアリ属性+ボリス追加

*ぺタアリは
無性に書きたく
なる病気中なので
相変わらず。。
突発的に描くと
思います。
至上主義なので・・・(笑)

クローバーに関しては
ナイトメア、グレイ好き
クローバーでは

*グレイのみ裏あり

その為、
グレアリ、カティアイも
推奨しています。
ナイアリも追加しました

*別視点で進行中
企画を2つ

その1.
クローバーの塔の城の話
ナイ×アリと思いきや・・・
実は・・・

その2.
ペタアリだけど、ブラッドを
絡ませようか・・・
これは裏もの
ブラックうさぎ光臨で
クロアリで
お茶会イベントが
両視点で
ありましたしね

*あくまでペタアリです
何度も言いますが
ペタアリ裏になります。

もし、ブラッド目当てで
来て頂いていたら
ものすごく
ブラットファン好きの方には
非常に残念なものに
なりますので、要注意

1は進行中
2は企画中
(もちろん、・・・2は
無しも有りです)

アラロスでは
カーティスのみ
ものすごく執着するくらい
大好きです。
至上主義なので(笑)
*カティアイ裏あり

*遥かなる4の
SSの約束ですので
必ず、SS の前に
1度、軽く読んでください

管理人は
葛城忍人
至上主義人間の
那岐、大好きっ子です。
忍千、那千、贔屓

なお
遥かなるでは
4の小説
しか取り扱いません
・・・・・ので、あしからず。

*今の所
この二つのみの
カップリングしか
取り扱っていません

忍人×千尋
那岐×千尋

上の2人の
遥かなる4
未プレイ、途中な方は
閲覧時注意
裏もあり

*忍人、那岐、裏あり

近日中に
アシュヴィン×千尋
増える予定です。

*アシュ裏あり

*翡翠の欠片シリーズ

真弘×珠紀
祐一×珠紀

拓磨×珠紀

ロゴスメンバーは
SS中、登場します
アリア、フィーアなどなど。

翡翠の雫シリーズより

昌×珠洲
克彦×珠洲

*祐一、真弘
ともに裏あり

拓磨は裏はありません

2に関しても
昌、克彦ともに裏あり

この点を理解した上で
閲覧してください。

*金色のコルダに
関しては・・・
加×日、月×日
のみのお取り扱い
金色は
ただ今
ストップ中ですが
ゲームお祝い
SSを執筆予定。

*ちなみに
葵くんは原作でなく
ゲームの葵くんです。
(=断言)

+蓮君もゲームの
イメージです。

*葵くん裏の可能性高し

金色作品に
入れてくれる優しい方
本当にありがとう
ございます。
この場を借りて
お礼を申し上げます

クリムゾンエンパイアも
確実に増えると
思いますので
随時プロフに
載せていきます

もし、描いた作品の
一つでも心の中に残った
作品だったり
良かったと思える
作品だったと
判断していただけたなら
拍手をくれると
とても嬉しいです
拍手あれば
いくらでも、描きます

++未だ、「GENOウィルス」が
猛威をふるっており
閲覧者の皆様も
PCのセキュリティ対策の強化
ならびに感染前の予防対策を
よろしくお願いいたします。 

ちなみに現時点で
当ブログサイト、PCともに
感染はしていません。

(2009年10月23日付け)

>>>なお
アダルト系サイト
または
その類のものも同様
コメントならびに
削除、閲覧禁止させて
頂きます。
(=コメントがあり次第
削除します)

>>>このブログ内に
記載されている
文章、詞、写真
全てにおいて
無断転載を禁止します

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Her shadow which is reflected in the pure glass *




*マークはR指定作品ですので、
18歳以下のお客様はSSの閲覧は、ご遠慮ください。







一瞬にして 籠絡

無垢な硝子に 影がさし
彼女の中の影を揺らす

脆く儚げで 変化に富み
眺め続けても ちっとも飽きない


                         
                         ◆


「・・・見ていて、飽きないな」
「・・・え?」
「・・・いつも、お前は」



              ◆act.1「扉の向こう側の話」




"お茶でもどうですか?"

そう、彼女に誘われたのは、ほんの数分前の帰り道での事

龍神の封印も解けて、村にも世界にも平和が訪れた

彼女には
封印前から、封印が無事に解けたら
一度、自分の村に戻ると伝えては、あったが
いつ戻るのかに関しては、正確に伝えてはいなかった

おりを見て、のつもりではいたが
そのタイミングをなかなか掴めずにいた

お茶に誘われた時、同時にその事がふと頭に浮かんで
彼女に伝えようか、と思った

空はどんよりと曇り空で
今にも雨粒が、落ちてきそうな気配もしたが
彼女の言葉に、誘われてみようと、そう、思った


ガラガラ・・・・・

音を立てて、扉が開いて、誰かが出てくるのかと
後ろに少し後ずさってみたが
玄関は、シンと静まりかえっていて、人の気配がない


「・・・家には誰もいないのか?」

と、彼女に聞くと

屈託のない、笑い顔で

「・・・はい」

と一つ答えた


詳しく聞くと

「・・・真緒姉さんは、亮司さん・・・天野家に用があると言って
出かけていて、陸は体験学習の事前学習で、遅くなる」

との事だった


そう言えば、小太郎も、事前学習の事を気にしていた

それで、小学生並みに
昨日の夜は"眠れない"・・・とのような事を遅くまで
話していた

確か、その時に
小太郎には"、出発は、後からでも良い"とも言ったのだ


「・・・お前の使い魔は?」

いつもなら、一番と言っても良いくらい先に出てくる
使い魔も、その姿はない

「・・・あ、何だか、今日は一日かけて、お寺の蔵掃除を
するとかで、朝から、バタバタしていて・・・」


つまり、この家には誰もいないと言っても良いわけで
"2人きり"


「・・・お前、それが分かっていて、俺を」
「・・・あの・・・?それって・・・??」


何も考えていないと言うべきか

ただ


「・・・少し、お話ししたかったんです」


そう、彼女が呟く


一つ溜息をついて、彼女の無防備さを諦めながら


"・・・雨宿りには、ちょうど良いかもないな"

とも思った


扉を閉めたと同時に、微かに香る、雨の匂いと
雨音が聞こえた

きっと、扉の向こうは、雨が降り出したに違いない




      ◆act.2「本降りになった雨の傍らで」




「・・・はい、お茶です」

出されたお茶は、ほうじ茶で
とても熱かったが、身体が温まった

湯気が立ち上って、お互い
テーブル越しに向かい合わせに座る

彼女が気を使って"何か、お茶菓子でも・・・"と
言ったが、"甘いものは、そんなに好きじゃない"と言って
断った

もしかしたら、彼女は何かに、気付いているのかもしれない
だから、お茶に誘ったのかもしれないと思った

向かいあう、彼女の瞳は、何か聞きたそうで
でも、上手い言葉は見つからないというような

お互いに、話を切り出せず
黙ったままで、いると、時計の針の音が
やけに大きく聞こえて
窓の外の雨は、雨音を強めて、本降りに変わったのを感じた



「・・・・聞かないのか?」
「・・・え?」
「・・・聞きたい事があるのだろう?」
「・・・あ・・・」

こちらから話を振ると、何か言いたそうに、彼女が口を開いた

「・・・あの、克彦さんは・・・」
「・・・何だ?」
「・・・村に・・・自分の村に・・・戻るんですよね?」
「・・・あぁ、一度戻ろうと思っている」
「・・・いつ頃、くらいに・・・・」
「・・・そんなもの、聞いてどうする」
「・・・見送りくらいは出来ると思って・・・それに」
「それに?」
「・・・最後の日は・・・一緒に・・・いたいので」
「・・・お前」
「はい」
「・・・明日って言ったら、どうするんだ」
「・・・ぁ・・・明日なんですか・・・」

半泣きそうな顔で、じっと彼女が、こちらを見つめてくる


色々な顔
この村に来た時から、ずっと
色々な表情を 近くで見てきた


「・・・見ていて、飽きないな」
「・・・え?」
「・・・いつも、お前は」


手前にあったガラスの一輪ざしに影が差す
彼女の中の影を揺らした
脆く儚げで 見る角度によって、変化して


色味を変える

まるで"彼女"のよう


テーブル越しにいた 彼女を、傍に引き寄せると
耳元で囁く

「・・・嘘・・・と言ったら?」
「・・・え・・・う・・・嘘・・・」
「・・・あぁ・・・」
「・・・それじゃ・・・あの・・・」
「・・・明後日には、一度、この村を出て、戻ろうと
思っている」
「・・・もう、準備も・・・」
「・・・あぁ・・・」
「・・・あ・・・あさって・・・」
「・・・寂しいのか?」

そう、問うと、とても心許なそうな顔で、俯いて
返事を返す

「・・・寂しい・・・です・・・」

"ずいぶん早いですね"
とでも、彼女は言いかけたのだろうか
引き寄せられた腕の中で、静かに黙り込む


今度は、泣きそうな顔

脆く儚げで 見える角度によって、変化する
色味を変える 硝子のような


今、彼女のその瞳の中には、俺は映っていない
いないのに
その表情は、容易に、想像ができる


いつまで 眺め続けても ちっとも飽きない

"彼女"


「・・・珠洲」

背後から、強く抱きしめて
名前を一つ、呼んでみる

小さくて 小さくて か細い  彼女のしなやかな身体

制服の襟足から覗く 彼女の白い肌
指先で少しめくって、肩に一つキスを落とす

さらさらとした雪のような白の
己の髪先も、彼女の肩先に一緒に落ちた


「・・・あ・・・っ・・・」

一瞬、びくっと身体を彼女が震わせて、甘い声が
微かに上がる

彼女の視線がこちらを向いて、俯いていたはずの顔を上げた
視界の中に、俺の姿が映る

「・・・さっきは泣きそうで・・・今度は真っ赤だな」
「・・・克彦さ・・・」
「・・・誰もいないのだろう?この家には」
「・・・あ・・・あの・・・」

無抵抗な彼女の、ブレザーのボタンをゆっくりと外す
同時に、中途半端にほどけていた、赤色のリボンが
音もなく、その場に落ちた

「・・・これでも、まだ、意味が分からないか?」
「・・・・・」

顔を赤くして黙り込む、彼女の口先に何度も
ついばむかのようなキスを、何度も落とす

「ん・・・ふ・・・ぅ・・・ん・・・っ」

胸の中で、無抵抗なままの彼女は
まるで、されるがままのようで
こじ開けた、口肱から、舌先を割り込ますと
息苦しそうに、必死で、舌先を絡めようとした

「・・・んん・・・っ」

ようやく、口先を離すと
水から上がったような、少し苦しそうな表情で
息を荒げていた

「・・・抵抗しないのか?」

彼女は、その問いに
首を振ったままで、すぐに返事をしない

「・・・珠洲」

顔を下から覗きこもうとすると
観念したかのように、彼女が言葉を吐く

「・・・す・・・」
「・・・す?」
「・・・す・・好きなんです・・・私・・・私・・・
克彦さんの事・・・だから・・・」


リボンがほどけ落ちたせいで
一番上のシャツのボタンが、一緒に外れていた

キスをするのに振り向かせたせいで
ブレザーにたくさんの、手のひらの跡が付いていた


「・・・珠洲」


彼女の名前をまた一つ呼ぶと、色味が変わる
衝動的に抱きしめていた
さっきよりも強く、強く 抱きしめる


掻き抱いていた 指先を、するっと
そのままボタンの場所まで、滑り落とすと
制服の上からでは分からなかった、胸元が、顕わになる


「・・・や・・・ぁ・・・」


指先で、探ると、彼女の胸の大きさが、とてもよく分かる
手のひらから、零れ落ちてしまいそうな


「・・・んん・・・っ・・・あ・・・っ」


キスには慣れていても 触れられることは初めてな彼女は
抵抗にも似た動きをするのが、精いっぱいで
腕を捕らえると、すぐに、その場に崩れ落ちて
仰向けに引き倒すと、瞳が揺れているのがよく見えた


「・・・あ・・・・」


逃げ切れないような 追いつめたれたかのような視線が
こちらを見つめる

緋色の彼女の長い髪が 辺り一面に広がって
傍には、ほどけた赤いリボンが散乱している

胸元は、しわだらけになって、下着が見え隠れしている

そのまま首筋にキスを落とせば
彼女が、身体を再び震わせて、瞳を伏せた

彼女の頬に、白い雪のような己の髪が
まとわりつくように流れ落ちて
彼女の、心臓の音がやけに大きく聞こえたような気がした

どうすればいいのか分からない彼女は
自分の指先と、キスの動きに、逐一反応を返してくる

「・・・んん・・・っ・・・ぁ・・・か・・・っひこ・・・さ・・・」

胸元のボタンがすべて外れると
白い肌と一緒に、彼女の胸があらわになり、そのまま
口に含むと、甘く転がした

彼女の右足に力が入って、彼女がよがる
膝を立てさせると、ためらいなく指先を膝の奥へと落とす


「・・・やぁ・・・」


スカートが少しまくれたが、こちらからは指先は見えない
見えない部分で、まさぐってうごめいている、己の指

彼女が声を上げるたび
スカートが揺れるたび

ちらっと見える己の指は、少し官能的で
それに反応する彼女の表情は、とても色っぽかった

「・・・克彦さ・・・っ」
「・・・感じているんだろう?」
「・・・私・・・ぁ・・・どうしたらいいのか・・・わからな・・・」


彼女の瞳は、困惑気味に揺れていて
何とも言えない表情であるのに
それでも、とても綺麗だった


一瞬で籠絡されてしまうかのような

彼女は、自分の意志の反対の事をしようと必至だ


「・・・あぁ・・・っやぁ・・・」

指を2本にして、その意思を壊そうとしてみる
快楽が意思に勝つ瞬間

こじ開けて、開いて、差し入れて

彼女の一番、見たことのない顔を
色味を変える表情を見られる瞬間を

「・・・あ・・・っ・・・ダメ・・・やぁ・・・克彦さん・・・」
「・・・何が、駄目なんだ?珠洲」


指先が落ちる
律動に反応を返す
水音にも似た音が聞こえ始める

彼女の腰が、順応して、その指先の動きに慣れ始めた時


遠くで声が聞こえた


「・・・主様、お帰りですか?」
「・・・沙那・・・」
「・・・ち・・・っ・・・使い魔の、お帰りか・・・」
「・・・ぁ・・・はい・・・」

上体を起こして、声を出そうとしている可愛い彼女に
少し意地悪をする

「・・・あ・・・」

後ろから抱き締めて、うなじにキスをする

「・・・ん・・・ぁ・・・克彦さ・・・」

指の動きを少し強くして、彼女の反応をみる
耐えられない、と言ったかのような赤
焦りにも似た青

見る角度によって色味が変わる
色々な表情の色

「・・・返事しなくて・・・良いのか?」
「・・・で・・・でも・・・あっ・・・」

足音が、もうすぐ傍まで聞こえる

「・・・主様?」

その声は、どんどん近くになってくる
扉の前まで、その声は近くなって

「・・・お客様ですか?」
「・・・ん・・・そ・・・そうな・・・の・・・お茶は出してあるから・・・
大丈夫・・・ん・・・ぁ・・・」
「・・・主様?風邪か何かですか?調子が悪いんですか?
・・・熱っぽいお声です、熱なら、お粥でも・・・」
「・・・だ・・・大丈夫・・・今、お客さんが来ているから・・・」
「・・・・そ、そうですか?でも、何かあったら、すぐに沙那に
お申し付けくださいね」
「う・・・うん・・・・」
「・・・蔵の掃除は、まだ、加奈がしておりますので、後で
お客様が帰られたら、覗いてあげて下さい」
「・・・う・・・ぅうん・・・」
「・・・本当に大丈夫・・・・」
「・・・大丈夫・・・」

その場から、足音が遠ざかっていく


「・・・扉を開かれる危機は回避、したな」

彼女が深いため息をついて
顔を赤くしながら、抗議する

「・・・い・・・意地悪しないでください」
「・・・お前が、可愛かったからな」
「・・・そんなの・・・言い訳になりません・・・」


彼女の中から指を抜いて、その場で舐める
彼女を振り向かせて、その指を含ませると

「・・・んん・・・っ」
「・・・・・・・」

また、何だか色っぽさを感じた


彼女が乱れた服を直している横で
小さく、小さく 耳元で、甘く囁く

「・・・最後の日だな」
「・・・え・・・?」
「・・・お前を全て頂くのも」


上目使いで、彼女を見た
彼女の顔が、また、色味を変える


「・・・そ、それは・・・・」
「・・・・・」


一瞬にして 籠絡

無垢な硝子に 影がさし
彼女の中の影を揺らす

脆く儚げで 変化に富み


「・・・本当」
「・・・あの・・・」
「・・・見つめていても、ちっとも飽きないな」
「・・・いつもお前は」


眺め続けても ちっとも飽きない




    ◆act2.5「本降りになった雨の傍らで/飽きない色の硝子」




「・・・主様、お客様は、克彦さまだったんですね」
「・・・う・・・うん」
「・・・どうかしました?」
「・・・な、何でもないよ」
「・・・何だか、今日の主様はとても変です」
「・・・今日は、な・・・何だか、生ぬるくて・・・変な気候だから・・・」
「・・・もし、何かありましたら、沙那に一番に教えて下さいね」
「・・・な、何かって・・・!?」
「・・・本当に、主様は、見ていて飽きません」
「・・・もう、行くね」
「・・・気をつけて」


見る角度によって、色味が変わる
無垢な硝子

まるで、まるで"彼女の"ような


「・・・・・・・・」

扉の前で、彼女を待つ

あんなに聞こえていた雨音も 微かに香っていた雨の匂いも
もうしない

本降りだった雨がやんだ

きっと、見送りの時は、傘は必要ないだろう





追いかける君と 置いて行く僕





思い出したくない過去
深く考えたくなかった 問い


いてもいなくても同じ
自分がいても いなくても 何も変わらない
何もずれない 何も崩れない

彼を 誰も知らない 
彼を 誰も知らない





                      
                         ◆



遠い遠い過去
母の泣き声が聞こえる

幼い弟を抱えて 必死に何かに耐えるような

「・・・・・・」

松明の赤が、瞳の中に焼きつくように
燃えているのが よく見える

何もかも見切ってしまったかのような
超然とした冷たい多くの瞳が
自分と母と弟を取り囲んで

終わりのない罵詈雑言を
永遠に浴びせるかのように


「・・・この、一族の面汚しが・・・」


蔑みや侮蔑を 弱い誰かにぶつけることで
自分の中の汚さを 消化させようとする
きっとこの多くの目も 怒鳴る声も
虚勢を張った 滑稽なものに過ぎない


「・・・どこまでもお前は、父親に似ているな」

「・・・・・」

「・・・口先だけの論者が・・・っ、何も履行する事も出来ずに
捨てたものは家族だけか」


「・・・この子たちには、関係ありません」

絞り出されたかのような母の声
悲鳴にも似た その声は悲しいくらいに良く響く

引き寄せられた母の手は、月明りの下、ぼんやりと浮かび上がり
細い 細い、痩せこけた腕 艶のない指先が
少年の心の中、恐れさえも 感じさせる

何一つ思い出もない
何一つ知らない
父親の

父親から受け継いだ血が
この忌まわしい今を 現実なものだと、自分に知らせている

抑えていた感情と衝動が 口先から零れ落ちる


「・・・違う」

「・・・何だ、言いたいことでもあるのか」

「・・・俺は、父親とは違う」



月が薄雲の中に 紛れ込んで じっと息を殺す
もうすぐ、明暗のない虚無が やって来る



"・・・これは、お前たちの復讐だろう? "


誰もがなしえなかった
憧れ的な父の行動を 疎ましいと思う 嫉妬

人を傷つける行為、感情そのもの
他者よりも自分が勝っているから来るものであり
確信から生じる劣等感


"報復と言うべきか"


低い少年の声に 一同が静まり返ると
同時に空から雨粒が落ち、燃えるよう見えていた松明の明かりを消した


囲む瞳は、いつの間にか虚ろなものへと変わり
姿を消した

いつまでも、雨は、少年を濡らし続けて
淡雪のような、白い髪から、音もなく、落ちた
空を見上げた顔に、降り積もるかのような、雫は
流れ落ちて、彼の中に 何も残さない

立ち尽くす少年の
焦点の定まらない視線は
他の誰かなら、泣いてしまいそうな そんな危ういバランスで
揺れていた




                       ◆




元の形に 復元できないくらい 歪に 歪に歪んでしまった
あの人は また一人で 泣いているのかもしれない




                       ◆




「・・・克彦さん・・・っ」

「・・・何だ、お前か・・・」

「相変わらず、歩くの・・・早いですよね」


少し息を切らして、ようやく、彼の隣にたどりつく
少し呆れたような、困り顔で、彼が、深いため息をつく


「・・・お前が遅いだけだ」

「・・・それはそうですけど・・・女の子なんですから
足が遅くて当然で・・・」

「・・・なぜか、お前には、いつも追いかけられている気がする」

「・・・だとしたら、それは、克彦さんが私を置いていっている証拠です」

「・・・確か、こう言うのは、他に言い方が・・・」

「・・・ス、ストーカーじゃないです!」


克彦さんは、一つ先輩で、私を監視するという名目で
この村にいる

「・・・何だ、認めるのか」
「・・・意地悪ですね・・・」
「・・・気がつかなかったのか、元からだ」


初めて、彼に会った時
とても怖い人だと思った

無口で、自分の意にそぐわない事は、何一つしない
口を開いたかと思えば、人の事を簡単に傷つける言葉を言う
今までに出会ったことのない 男の人


でも、怖いと同時に
なぜか 寂しい人だと思った


言葉に上手く表せないけれど
綺麗な容姿には、不似合いなほどの寂しさが
眼には見えないけれど、彼を包み込んでいる


そんな気がした


「・・・なぜ、付いてきた」

「・・・なぜって・・・」


克彦さんを見ると、
ほっとけなくて 追いかけたくなるんです・・・と言いかけて
口を塞ぐ

「・・・?」

そんな事を言ったら、ますます、さっきの
ストーカーを自分で認めてしまいそうで止めた


「・・・たまたま、同じ方向に用があったので・・・」


慌てて、一つ嘘をついた


「・・・お前は、母親を恨んだことはないのか?」
「・・・え?」
「・・・いや・・・」

突然口を開いた、彼の言葉が意外だったので
少し驚いた顔になる

「・・・学校で、お前が玉依姫であるから、避けられている
というのを聞いた・・・」
「・・・あ・・・」

クラスメイトは、もちろん、幼馴染の昌や典薬寮の二人、弟の陸
以外からは、避けられているというか、遠目で見られている
その原因は、自分が"玉依姫"であるからであり

それは特別であって、畏怖、畏敬なもの

人から見れば、避ける対象に過ぎない

母親は、玉依姫として身を捧げ、それに失敗したから
次の災厄が起こると言われている

もし、母親が封印に失敗しなければ、村人の誰かが
生贄として、その身を捧げなければならないと言う噂なんて
すぐには広まらなかったはずだ


もし、母親が封印に成功していれば


「・・・宿命、なのかもしれません」

「・・・もし、成功していれば・・・と考えはしないのか」

「・・・成功してもしなくても、いずれは自分の身は、捧げる日が
いつか来てしまいます、恨んだところで、何か変わるのか、と言えば
何も変わらないんです」


環境を変えて、知らない街に住む
この村を出て、幸せに暮らそうとしても、いずれ、ここに回帰する
会いたくなかった人に、どこかで偶然会ってしまうみたいに
きっと、この世界は輪廻している


「・・・でも、そのことで、自分が傷ついたり
泣かなかったりしなかったと言えば、嘘です」


「・・・・・」

「・・・克彦さんは、何か・・・恨んでいるんですか?」

「・・・父を、な・・・これは復讐だ」


風が凪ぐ
彼の細い雪のような白い髪が、風で宙に舞った

思わず、その場に立ち止まる
彼がどんどん先に行く


言葉が上手く出てこない
どうして、こんなに 彼は寂しそうに見えるのだろう

本当は、彼は



                            
                       ◆



"あぁ"

元の形に 復元できないくらい 歪に
歪に歪んでしまった


"もう、直せないわね、壊すしかないわ"

母が言う

壊すのは簡単だけど、直すのは難しい
愛着がなければないほど

憎しみが強ければ強いほど


どうして、父さんは僕たちを 置いていってしまったんだろう
まだ、何一つ 思い出も何も残していないのに


"ねぇ、母さん"


"・・・なぁに?"


妖しを追い続けて 身を滅ぼすほどに


"父さんは、どうして、僕たちを置いていってしまったんだろう?"


僕たちが、こんなにも一族の者たちから
不当な扱いを受ける事を 予想出来ていて


それなのに



"・・・きっと私たちを、愛しているからよ"



聞こえる 母の泣き声と雑多に紛れた中の雑言が



"・・・この、一族の面汚しが・・・ "



愛してる?

馬鹿げている 


あぁ、本当に 馬鹿げている



「・・・克彦さん」


細くて長い指が、自分の背中を掴んだ
あの時、月明りに見た指とは違う また別の細い指


「・・・でも、きっと、答えがあるんですよ、本当は」

「・・・何が」

「・・・その・・・きっと本当は」

「・・・何も知らないくせに、分かった事を言うな」

「・・・分かりません、分からないけど、でも、克彦さんが、寂しいのは
分かります」

「・・・復讐なんて、自分の中の憎しみを消すことの
理由の一つに過ぎない、それのどこが寂しいと言う?」

「・・・復讐を考えること自体が、です」



壊してしまえば良い
そんなものなんて
簡単だ  ただ知らんふりすれば良い
簡単だ どこかに捨て置いてしまえば良い


忘れてしまえば、時が解決してくれる


それに愛着さえなければ
それをずっと大切にしたいと思わなければ


大嫌いだ
もう二度と、欲しいと思うものか



「・・・何で、お前は、そんな事、俺に教えるんだ」

「・・・・・・・」

「・・・俺には、必要ないんだよ」



憎しみしか



「・・・克彦さ・・・」


彼女の身体が、彼の体に引き寄せられる
彼女の顔に、彼の白い髪がかかる



「・・・消す方法しか、必要ない」

「・・・克彦さん・・・」



思い出したくない過去
深く考えたくなかった 問い


いてもいなくても同じ
自分がいても いなくても 何も変わらない
何もずれない 何も崩れない

だって、俺は誰も傷つけたくなかった

心が刃物みたいに 
何気なく触れたもの全部、傷つけることが怖かったから

本当は、答えも知っていた

だけど、知らないふりをしたかった

誰も自分を知らないままで、そして、自分も朽ちていく

なのに、彼女はそれを許さない


いつも、自分を追いかけてくれるのだ
まるで、ここにいるよ、と言うかのように


「・・・珠洲・・・・」


強く抱きしめれれば、抱き締めるほど、分かる、彼女の
しなやかで、か細い身体

本当は、誰かに愛されることを
ずっと諦めようと思いながら 
彼女を好きになってしまうような そんな予感がした


「・・・知っていた、本当は、それでも・・・」

「・・・ほっとけないからです」

「・・・珠洲?」

「・・・だって・・・いつも、置いていかれちゃいますから」


不器用だからと諦めていた

知らないことは、恥ずかしくない
分かりあえば、痛みにならない


上手な言葉にならなくても



「・・・あの、ストーカー決定ですか?」



簡単な挨拶も言えなくて、それでも 

近くで笑う 彼女の顔が、とても愛しいと思った


「・・・そうだな」
「・・・えぇ・・・っ・・・」


俺を笑わないで
ずっと待っていたのは


「・・・珠洲」
「・・・あの・・・」

抱きよせた身体を、さらに近づける
彼女の綺麗な、紅茶色にも似た瞳が、一瞬、潤んだ
後ろに少し傾いた、緋色の髪が、夕焼け空の色と重なって
グラデーションかかった色味がかかる

指先で、彼女の髪を掬うと、音もなく落ちた


「・・・両想いなら、問題ないだろう?」
「・・・あ・・・」


そのまま唇を寄せる
口先が重なって、彼女の声が先に漏れる


「・・・克彦さ・・・ん・・・っ」


次に、瞳を開ける時

あの時、大切にしたかった
同じものはもう、ここにないけれど きっと



彼女がそこにいる





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      ◆act.2.「打算だらけのうさぎの毒薬/ペーターの場合」




欲しいだけあげる
欲しいならあげる

いくらでも


「・・・アリス、愛しています」
「・・・嘘つき」
「・・・嘘じゃありませんよ」
「・・・言葉の意味なんて、理解してないくせに・・・」


彼の言う"愛している" "好き"には澱みも濁りもないのに
否定できるのは、彼の言葉が透明すぎて
芯が透けて見えてしまうからなのかもしれない

それ以前に否定する私の方が
よっぽど

「・・・アリスの世界で一番と言う言葉を探したら、これしか
無かったんですよ」
「なら、一番って言えばいいじゃない」

言葉に当てはまってしまうほどの"一番"なら、きっと
それだけのものでしかない
そもそも、この世界の住人に"心"を求めすぎても
きりがないし、果てがない

ペーターは、その事に気がついていないだけで、本当は
私の事なんて

「・・・僕の言葉を言葉に当てはまる気持ちって
言いたいんですか?」
「・・・そうよ」
「・・・そうやって、貴方はいつも僕を否定しますけど」
「・・・アリスには、僕がよっぽど透けて見えてるんですね」
「・・・え?」
「・・・否定するって事は、それをすでに知っていると言う事で
アリスが僕を知っているから、アリスが僕を理解しているから
僕を貴方の中で、位置付けてるから、そうでしょう?」
「・・・別に、そんな深いこと・・・」

伸びた彼の手が、私の髪先をつかむ
口元を寄せたかと思うと、髪先に1つ

「・・・な・・・っ・・・ペーター・・・何を」
「・・・何ってキスですよ、僕はアリスが好きですから
それとも、唇の方が良かったとか?」
「・・・そういう問題じゃなくて」
「・・・僕はちゃんと、知っているんです」



"アリスの欲しい言葉を"

"アリスの必要とするものを"


そして



「・・・何?」
「・・・秘密ですよ」

そうやって彼はいつでも、私を甘やかす
言葉の花束を、無償に送るふりをして、真意を探る

見返りを求めないと言いながら
その量が多ければ多いほど、それが自分の気持ちだと
私に押し付ける


「・・・秘密主義なうさぎだった?」
「・・・さぁ、どうでしょう?」


私を花で一杯にして、動けなくして

知らないふりをする


無意識に 故意的に 打算だらけなウサギ



「・・・見返りは求めないウサギだった?」
「・・・アリス限定ですよ」


そして、また、甘い囁きのような言葉
耳元で彼が紡ぐ言葉は、"魅了"の成分の高い毒薬

「・・・僕は・・・知っているから、いくらでもあげられる」


欲しいだけあげる
欲しいならあげる

いくらでも


「・・・いらないわよ」
「・・・見返りはいりませんよ」
「・・・本意じゃないくせに」
「・・・いくらでも」


私はその真意を知らない
もしかしたら、私が彼を利用していたように思えて
彼に利用されていたのかもしれない


「・・・いらないって」

後ろから、彼が抱きつく
頬に触れた、彼の唇が厚い
重なり合う両手が、胸に触れる


「・・・アリス、どきどき言ってますよ」
「・・・ん・・・やぁ・・・っ」
「・・・それはアリスの本意ですか?」
「・・・そう・・・よ・・・」
「・・・でも、僕は生きていて、アリスがここにいる限り・・・囁ける」

この世界に連れられた時、どうして、このうさぎの傍から
離れられなかったのか

それは、今なら分かる

「・・・ん・・・っやだ・・・やめっ・・・」

首筋に落としたキスは、唇の熱さとは反比例して、冷たい

「・・・アリスには、僕が必要でしょう?」

離れられなかったのは、ペーターが、自分を見透かしていたから
弱い自分を否定しなかったから

「・・・や・・・っ・・・離し…」
「・・・でも、貴方はそう望んでない」
「・・・あ・・・っ・・・何でもお見通しなのね・・・」
「・・・アリスの事なら、何でも」

彼は、甘やす代わりに、本当に冷酷だ
私には見せない顔を、私には見えない所でしているのだろう

そう、今も

「・・・アリスのいる世界に、僕がいないなんて、そんな悲しい事
考えたくもない、誰にもあげませんよ」
「・・・ペーターのものじゃないわ」
「・・・えぇ、貴方は僕のものではないけれど、僕は貴方のものだから」
「・・・ん・・・っ・・・あっ・・・」
「・・・いつだって、アリス、貴方のためなら、何でもできますよ」


取り返しのつかない事になっても
そうやって、壊れたものを すぐに修復してしまうから


「・・・ん・・・っやぁっ・・・やめ・・・っ・・・」
「・・・もうすぐですよ」

捕まえた手を器用に動かして、見えない部分を探る
感じる、彼女の甘い声に、彼は彼女をその場に引き倒す

夜が来る
彼は、少女を抱きしめたまま、今日も眠る



   ◆act2.5 「何もつかめない右手と少女の傍ら/アリスの場合」




「・・・邪魔なんですよね、消えて下さいよ」
「・・・あはは、もうばれたか」
「・・・アリスに変な事を吹き込まないで下さいよ、穢れる」
「・・・それ、面白い例えだね」
「・・・貴方はアリスに害を与える存在でしかない」

冷たい緑の瞳が、虫を見るかのようにねめつける
蔑んだというのはこう言う事だと思い知らせるような視線を
感じながら、それに応戦するかのように赤茶色の瞳が応戦する

「・・・愛の告白ぐらい許してくれよ」
「・・・許すとか許さない問題じゃありませんよ」

言葉が少なくなって
その場の雰囲気が殺気へと変わっていく

「・・・本当・・・めんどくさいよね」
「・・・えぇ、消えて欲しいな」


刹那、お互いに向けた銃口と剣先が 淡く鈍く、銀色に光った




                     ◆



その夜は珍しく
ペーターはやって来なくて
安心しているはずなのに なぜかひどく落ち着かない気もした


「・・・・来ない方がいいのよ」

そう思って、布団に潜る
夜明けの光は、少し冷たくて 何もつかめない右手がすうすうした

いつの間にこんなに 彼の存在が大きくなってしまったんだろうと
焦燥感にも似た気持ちに煽られながら
認めたくない気持ちが そこまでやっているような気がして

早く夢の中に連れて行って欲しくなった
目をつぶっても まだ、夜は明けない


一度見送ったはずの想いが、再び近づいてくるのを
感じながら、どうすればいいのか分からなかった

何も掴めない右手を握りしめて
過去の言葉に耳を澄ます


"君は壊れた事を引きずって
誰かに、慰めてほしいと思う、そう、ここに可哀そうな女の子がいる
私を助けてって"


今も、彼を呼んでいるのかもしれない
彼の名を


視界が、いつの間にか真っ白に変わって
誰も踏み込むことのない静寂の傍らに 闇の気配が立ち込めて
私はその闇に落ちていく






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もらうばかりの花束は甘く
その量で いつでも自分の心を推し量る

私は待つだけ 信じて待つだけ



   ◆act.1「果てしない終わりの"終わり"/ペーターの場合」





風が凪いでシーツが揺れた
辺り一面に広がる光は 眩しくて 思わず、右手で目を覆いたくなる


空は快晴


この世界は、時間帯が一定しない事はあっても
天気が変わることはないから
昼間と言う時間帯が来れば、必然的に

"仕事"だと言う感覚に陥る

手元にある洗濯かごから、洗濯物を拾い上げようとすると
背後に誰かの視線を感じた
この時間帯に、ここにいるのは一人しかいない

小さくため息をひとつ
深く深呼吸をして、その名前を呼ぶ


「・・・ペーター・・・仕事に戻りなさいよ」
「・・・仕事中です」
「・・・・・」


ニコッと笑う彼の笑顔に、悪意のみじんも感じさせない
ペーター=ホワイト 
その人以外には


「・・・アリス、愛してますよ」
「・・・はいはい」
「・・・嘘じゃありませんよ」
「・・・言葉に意味も理解してないでしょ、あんたは」
「・・・理解してますよ」
「・・・そうかしら?」


・・・それは夜
冴え冴えとした光が窓から差し込む月明かりの夜

夜の時間帯になると、当たり前のように私の部屋に入ってきて
隣で眠る白ウサギ


それは、毎日
それは、必然

彼は私の隣に潜りこむと
まるで、魔法の呪文のように繰り返す言葉


"・・・アリス、好きですよ"
そして

"アリス、愛してる"


聞き飽きているはずなのに
彼がいつも、言う
その言葉は、毎回、新しく生まれる言葉のようだ


「・・・あのね、そう言う言葉は、簡単に口にしちゃいけないのよ」


そう、何度も彼に口にしようとして、唇を塞がれてしまう
意味を理解していないな、と思いながらも
毎回聞き飽きた、その言葉のはずが
繰り返される、本物の魔法の呪文のような言葉のようで
心地よかったりもした

そして、窓から覗く、半透明な夜は、どこまでも深い青で
終わりのないように見えた


彼が、私に繰り返す言葉も


「・・・もう、昼間よ、ペーター、目が覚めてる?」
「もちろんです」
「・・・起きていたら、たくさん考える事があるでしょう、そんな事
考えている暇なんて・・・」

そう言いかけて、右から吹いた風に
前に揺れた、自分の髪を撫でつけようと、指で触れる

お互いの髪が風に凪いで
彼の緑の瞳が、彼と視線を合わせた瞬間に
奥へとギュッと引き締まるのが見えた


「・・・ありませんよ」


濁りのない彼の言葉に、なぜか終わりのないように思えた


「・・・アリス以外の事なんて」


果てしない終わりの"終わり"

ため息を1つついて、空を見上げた彼の瞳に
まるで、緑色から、空色のグラデーションのような
変化の色が瞳の中に見えた



「・・・・・」


終わりが見えてしまうと、いつも、物悲しくなって
手を止めてしまう
最期を知るのが醍醐味だと、誰かが言っていたれど
誰だっただろう

完全に終わりを見てしまうと、もう、その先を知る事も
そのものに触れる事も
手が届かないような そんな気がして

終わりだと知っていて、手つかずのままにする
いなくなられるのが怖いから
自分の中から、消えてしまうのが 壊れてしまうのが怖いから


声をかけようとして、声が出なかった
声が震えそうになったのが、自分でも判ったから


それを見透かすように、彼も私に声をかけない
変わらないでいられるのは、この風と空

ずっと顔を撫でつける、風は変わらない
大きく広がる、この青い空には果てがない

同じ速度で吹き続ける風は
干したばかりのシーツを風に飛ばした



     ◆act.1.5 「欲しがり屋の棘/エースの場合」




「・・・君ってさ、いつも欲しがってばかりだよね」
「・・・え?」
「・・・言葉にしないだけでさ」


甘いバラの香りが充満する、ここはビバルディのお気に入りの庭
場所場所に、数多くのバラが植えられている

たくさんのバラと言えど、その色は一色


"赤"だけ


"・・・ここっていいよね"とエースの声を聞いたのは
ほんの数分前の事で
気がつけば、一緒にベンチに座っていた

この時間にエースがいるなんて、8割が仕事をサボっているのは
間違えなくて、残りの2割は仕事中だが、迷子になっている

に違いない

「・・・別に何も欲しくない」
「・・・そうかな?僕にはもの欲しそうに見えるけど」


彼は、遠慮を知らない
彼にとって人の心を傷つける事に意味はないから
気にする理由の一つにもならないのだろうけど


「・・・何を欲しがっているように見えるの?」
「・・・孤独や寂しさを癒して欲しそうに」
「・・・・」
「・・・図星?慰めてあげるのが今の君にとって、優しさなのかも
知れないけど、僕は博愛主義者じゃないから」
「・・・慰めてほしいなんて言ってないわ」
「・・・・それに、僕は傷ついている君の方が好きなんだ」


"図星?"と聞かれた時、一瞬、胸がドキッとして
その一瞬、見透かされたのかと思った


"・・・アリス、貴方は顔に出やすいから心配ですよ"
とペーターも言っていたけど
そんなに顔に出やすいのだろうか

思わず、両手で、顔を覆い隠そうとして
それを制止される

「・・・あはは、隠さないでよ、言ったろ、僕は君が傷つく方が好きだって」
「・・・離して」
「・・・僕はペーターさんみたく、優しくないけど、人が困っていたら
助けてあげるよ」
「・・・博愛主義者じゃないんじゃなかったの?」
「・・・時と場合によるかな」
「・・・都合の良い言い訳ね」
「・・・君って、残酷だよね」
「・・・急に何を」
「・・・いつもペーターさんに、好きだとか愛してるとか
言わせてるんでしょ?」
「・・・言わせてない」
「・・・そうかな」

・・・それは夜
冴え冴えとした光が窓から差し込む月明かりの夜

夜の時間帯になると、当たり前のように私の部屋に入ってきて
隣で眠る白ウサギ


それは、毎日
それは、必然

彼は私の隣に潜りこむと
まるで、魔法の呪文のように繰り返す言葉


繰り返される、自分を推し量れるだけの甘い言葉


「・・・本当にペーターさんが必要ないなら、一言いえばいい」
「・・・何を」
「・・・消えてなくなれって」
「・・・君は時たま、いなくなれとか、死んでなんて
軽々しく言葉にするけどそれって、現実に、簡単に実現しないと
君が本当は心で思っているからだ、"死"って言葉の概念は
色々な意味にとらえられる」
「・・・・・」
「本当に必要なかったら、たった一言で良い、消えて
いなくなれと言えばいい、簡単さ、実現可能だよ」

横のエースの顔を見る
遠くを見ているようで、焦点の定まらない、まるで暗く深く
死んだ魚のような目

この世界では、死への概念が軽く、そして薄い
今もどこかで、ビバルディの声が響いているかもしれない

"・・・処刑せよ"と

でも、私は
私の存在は

「・・・この世界の住人ではないとでも言いたいの?」
「・・・私にそんな事を言う資格は」
「・・・君は、この世界を知った、この世界に落ちてきたところから
もう、この世界の住人なんだよ」
「・・・だからって・・・」

切り離したかった別世界
私はこの世界では、誰にも嫌われる事はないし
むしろ誰かの特別になれる

前にいた世界とは違う
何でも、好きな事だって叶うのに 手に入れられるのに
それでも

「・・・ペーターさんにとって、君の一言は、何十倍もの意味がある
僕や他のものたちの一言よりも・・・女王の命令よりも
ペーターさんが消える事だって」

「・・・やめて」

「・・・僕はいつだって望んでいるんだよ、ペーターさんがいなくなれば
君を一人占めできる、それにきっと彼だって、君の一言に
従ったって事で、幸福を得られるかもしれない」

「・・・やだ」

「・・・お互いの幸せの為じゃないか、違うの?」

「・・・そんなの幸せなんて」

「・・・幸せは形作られる事はないよ、実際幸せなんて
幸せである事は気づかずに、後で気づくことの方が多い」


"あぁ、あの時が一番幸福だったのかも知れない"って

「・・・違う」

「・・・だけど、君はそれを選ばない、なぜなら、君はその言葉で
君自身の世界を守っているから・・・もし君の中からペーターさんの声が
消えてしまったら、君の世界は・・・」


ガシャン・・・・

耳の奥で、エースの他に懐かしい声が響いた
これは誰だろう

あぁ、あの時だ


"あぁ、壊れてしまったわ"


"・・・姉さん"


"せっかく綺麗な花瓶をこの花瓶に差そうと思っていたのに"



"・・・姉さん、新しい花瓶を"



"大丈夫よアリス、もう、新しい次の花瓶は用意してあるの"


私には「次」はない
1つのものが壊れてしまったら、修復しようと考える

だけど、姉さんには壊れても「次」がある

取り返しがつかないほど、例え壊れてしまっても
もう「次」がある

床に散らばった破片と
一面に広がった水が綺麗な花束の花の色を映していた

いつまでも その花束を 映していた


「・・・もし、壊れたんだとしたら、元に戻せばいいじゃない」
「・・・修復が難しくても?」
「・・・私の世界なんだもの、それはないはず」
「・・・ないとは言い切れない、君は壊れた事を引きずって
誰かに、慰めてほしいと思う、そう、ここに可哀そうな女の子がいる
私を助けてって」
「・・・それ・・・そうだとしても・・・私と何が関係あるの?」
「・・・気がつかないの?アリス」
「・・・何を・・・」
「・・・なぜ、君がここにいるか気がつかないの?」
「・・・え?」
「・・・君は当たり前のようにこの世界にいるけれど、それまでは
違う、そう、ここに」
「・・・ペーターに連れられて、ここに」
「・・・君が呼んだんだ、ペーターさんを」
「・・・何を・・・」
「・・・君の寂しさと孤独が、彼を虜にした、そして彼の気を引いた」
「・・・それは・・・」
「・・・そして、ペーターさんを呼んだ」
「・・・本当に君は残酷だね」
「・・・・・」

掴まれた手を引かれる
エースの胸の中に収まる
きつく抱きしめられた身体は、抵抗する私を離そうとしない

「・・・何のつもり?」
「・・・僕は君が好きだよ」
「・・・私は嫌いだわ」
「・・・そう言う、君が、さ」

もらうばかりの花束は甘い
だけど、彼のくれる花束は
この庭園の赤いバラのように、棘がある






It is a clear sky according to the forecast





いつからだろう 何かを思い出すその瞬間に

どこか遠くに


記憶の一瞬に

君がいつも いてくれたのは




                    ◆



久しぶりに、自転車を買った

新品の赤い自転車


本当は、もっとお金を貯めて
二輪車のバイクを買うつもりの貯金のはずだった


あの日までは




                   ◆



「・・・あの」
「・・・ん?」

バイクのカタログを見ていた、昼下がり
後ろから

「・・・真弘先輩、そのカタログに自転車って乗ってますか?」

と彼女が俺に聞くから

本当は、バイクを買うつもりで見ていたカタログが
いつの間にか、全然違う目的に、変わってしまった


「・・・何だよ、お前、自転車でも買うのか?」


静まり返った屋上、彼女と俺しかいない
見上げる空は、何故だか、やけに高く感じて
夏を感じさせるような、日差しが、頬に強く差しこんで
気温を上昇させていく

「・・・買う予定はないんですけど、一緒に見たいな、と思って」
「・・・買うつもりもないのに?」
「・・・買うつもりはなくても、興味はあります」

彼女が興味があると指差したのは、赤い自転車

"7段変速機付き 、前後ダブルサスペンション搭載
26インチ 折りたたみマウンテンバイク"


「・・・お前、良い自転車選ぶな」

「・・・真弘先輩、ダ・・・ダブルサス・・・サスペンション・・・って何ですか?」

「この写真、両側にV字型のアームがあるだろ?このアームを上下に
二つ上手く使って、アームにスプリングの力を作用させるのを
ダブルサスペンション、って言うんだよ」

「・・・へぇ、先輩ってもの知りなんですね」

「・・・お前、知らないとか思っただろ」

「・・・え、お、思ってないですよ」

「・・・正直に言え」

「・・・本当です」

「・・・まぁ・・・良いけどな」

「・・・自転車、買うんですか?」

「・・・え・・・いや別に・・・」

「・・・良いですね、買ったら見せて下さい」


二輪車のバイクを買うつもりなんだ、と言いかけて
彼女が隣で笑う


「・・・・・」


何だか、彼女の笑顔に、言葉の続きを忘れてしまった


ずっと、カタログは閉じられず
折られたままのページが、風に揺れて
いつの間にか、たくさんの月日が経っていた


赤い自転車が、俺の目の前に確かにあった


「・・・気持ちの良い風だな」

朝の陽射しが、ほのかにちょうど良くて
予報通りに晴れた空

今日は、きっと自転車日和

「・・・・・」


別に買うつもりなんてなかったのに
別に、彼女の為とか、そんなんでもないのに


もう、あの昼下がりに話した自転車の話なんて
遠い過去の思い出にしか、過ぎないのに

「・・・・・・」

なぜだか、急に彼女に逢いたくなった

学校に行けば、会えるのに
わざわざ、この赤い自転車になんかに乗らなくても

そんなかっこ悪い事

相当暇なんだな、とか、あいつに思われるのに、決まってる

「・・・・・・」

勢いをつけて、自転車で風を切る
空地を抜けて、砂利道を漕いで

誰が見てるわけでもないのに
朝、鏡で確認した、寝癖をやけに気にする自分は

理由をつけて、彼女に逢いたいだけなのかも知れない


何度だって 思い出せる彼女の姿は
いつでも、自分の記憶の一瞬にいて

何かを思い出すその瞬間に どこか遠くに


いつでも


「・・・珠紀・・・・」


そう、記憶の中で、嬉しそうに笑っていて


「・・・真弘先輩ー!」


その声にびっくりして、自転車を急停車させる
彼女の声は聞き慣れているのに
何故だか、酷く慌てる


「・・・な、何だよ、急に大きな声出すな」


まるで、彼女に心の中、見透かされたみたいに思えて

一瞬閉じかけた、瞳を、覚醒させたかのように見開く
記憶の中と同じ、嬉しそうに笑う彼女の顔が見える


覚めない夢の続きを見ているようで


「・・・真弘先輩、自転車に乗ってるから、大きな声を出さないと
気がつかないと思って」

「・・・・・・」

「・・・真弘先輩、起きてますか?」


彼女にそう、突っ込まれてしまうほど

「・・・お、起きてるよ」

「・・・その自転車」

「・・・え・・・あぁ」

「・・・あの時の自転車ですね」

「・・・覚えてたのか?」

「・・・はい」

「・・・ふぅん」

「・・・な、何ですか、忘れませんよ」

「・・・忘れっぽいお前だから、前に話した事なんて、忘れてるかと思った」

「・・・忘れませんよ、真弘先輩と話した事は」

「・・・・・」

「・・・べ、別に深い意味は・・・ないですからね!」


自分から言ったくせに、顔を赤くして
俺は、その言葉の裏の意味を知りたくなる


「・・・わ、私、乗ります」
「・・・え?おい・・・」
「・・・出発進行、真弘先輩急いで、遅刻しますよ」

本当は、二人乗りはいけないはずのこの道
だけど、学校までは、ほんの少しの距離

「・・・仕方ねぇな・・・」


自転車を走らせる俺の背中で
彼女は、夕日にも負けないくらいの赤い顔


「・・・分かりやすい」
「・・・な、何がですか?」
「・・・お前」


学校に着いたら、聞いてみようか


「・・・ずるい」
「・・・何が?」
「・・・いつもそうやって、先輩は」


その裏の気持ちを
彼女の中に、生まれたばかりの新しい気持ちを


「・・・図星?」
「・・・後で、教えてあげます」


隠し続けられるほど、彼女は強くないはずだから


自転車を買う前も 買った後も
いつでも 君の事を考えてる

いつからだろう 何かを思い出すその瞬間に

どこか遠くに


記憶の一瞬に

君がいつも いてくれたのは


「・・・真弘先輩、急いで」


背中越しに聞こえる、彼女の声に耳を澄ませる

心地良い風が耳元を通り過ぎていく


「・・・あ、真弘先輩、寝癖・・・」
「・・・それも・・・後で、教えてくれよ」
「・・・ははは・・・はい」


近づいて 触れて 澄ませて 俺と話して
俺は少しずつ、彼女に侵食されて

俺は君に
少しずつ変えられて
新しい自分に創リ変えられていく






テーマ : ゲ−ムの小説・語り - ジャンル : 小説・文学

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